部分的テレワーク(ハイブリッドワーク)の導入と実務上の注意点
更新日:9月4日

新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、テレワークは日本企業に急速に普及しました。一時的に普及したテレワークですが、コロナ禍の終焉に伴い、感染対策としての全社的な在宅勤務は減少しました。
一方で、引き続き導入している企業では、就業場所の柔軟性による離職の防止策として、さらには求職者に訴求する採用策として取り入れられています。
そこで改めてテレワークのメリット、デメリットと導入するときに検討すべき課題について取り上げてまいります。
出典:
厚生労働省「テレワーク総合ポータルサイト」:https://telework.mhlw.go.jp/
厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html
1.部分的テレワークとは何か
コロナ禍を契機に急速に普及したテレワークは、現在では「完全在宅」から「部分的テレワーク(ハイブリッドワーク)」へ移行する企業が増えています。
厚生労働省・総務省もその普及を推進しており、制度の適切な運用が経営課題として注目されています。
「部分的テレワーク」とは、通常のオフィス勤務と在宅勤務(テレワーク)を組み合わせた働き方で、「ハイブリッドワーク」とも呼ばれます。週に数日だけ出社し、残りの日は自宅やサテライトオフィスで業務を行う形態が代表例です。
在宅勤務:自宅を就業場所とする形態
サテライトオフィス勤務:企業が用意した専用施設やシェアオフィスで勤務
モバイルワーク:移動中の交通機関やカフェ、顧客先などで勤務
完全テレワークとは異なり、出社日を設けることでオフィスワークとテレワーク双方のメリットを享受できる点が特徴です。
「ハイブリットワーク」とは、従来型のオフィス勤務と、テレワークを組み合わせた新しい働き方を指す言葉です。ハイブリッドワークの導入によって、従業員個々の事情に合わせた勤務が可能となり、より柔軟な働き方を実現できます。
2.企業・従業員双方のメリット
人材確保・離職防止:育児・介護中の従業員や遠隔地の優秀な人材を確保しやすくなるテレワーク可能な環境を整備することは、育児・介護中の従業員や、通勤が困難な地域に居住する優秀な人材の確保につながります。また、「柔軟な働き方ができる企業」というブランディングは、採用市場における競争力を高めます。
コスト削減:オフィススペースの縮小による賃料削減、通勤交通費の削減、ペーパーレス化の促進など、固定費の削減効果が見込めます。
生産性向上:集中業務はテレワーク、チームワークはオフィスと使い分けることで効率アップするといわれています。
BCP(事業継続)対策:自然災害やコロナのようなパンデミックなどによりオフィスが使用不能となった場合でも、テレワーク環境が整っていれば事業を継続・早期復旧することが可能です。
従業員満足度向上:通勤負担の軽減、ワーク・ライフ・バランスの改善として導入されるケースもあります。
3.デメリット・課題
コミュニケーションの希薄化:出社日が限られるため、情報共有や連携が不足しやすいコミュニケーションが希薄になりやすいです。
人事評価の難しさ:成果が見えにくく、公平な評価制度の構築が必要人事考課が難しくなりやすいです。
セキュリティリスク:社外での業務により情報漏洩リスクが高まるセキュリティ面でリスクを抱えやすいです。
長時間労働の懸念:仕事とプライベートの境界が曖昧になり、労働時間が延びやすい。特に夜型になってしまい、深夜の時間帯に労働するケースが見受けられます。
4.実務上の問題点
(1)労働時間管理
労働基準法上の労働者がテレワークを行う場合であっても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などの労働基準関係法令が適用されます。
時間外・深夜・休日労働には36協定の締結・届出と割増賃金の支払いが必要があります。
「中抜け時間」について、休憩時間とするか、始業・終業時刻をスライドさせるか、あらかじめルールを決めておく必要があります。
中抜け時間を把握するには、使用者が業務の指示をしないこと及び労働者の自由利用が保証されていることが前提となります。
中抜け時間を休憩時間とする場合は、就業規則などに就業時刻の変更がある旨を記載した上で、労働者の報告に基づいて、始業時刻の繰り上げまたは終業時刻の繰り下げを行うとよいといえます。
使用者の指揮命令下にある場合は労働時間に該当しますので、「ハイブリッドワーク」をする際には、就業場所、始業と就業の時間をきちんと取り決めが必要です。
(2)就業規則・費用負担
テレワークを導入・運用する際には、労使間のトラブルを未然に防ぐため、「テレワーク規程」を作成し、労働基準監督署へ届出を行い、周知徹底することが重要です。
労働条件通知書に「就業場所の変更の範囲」の明示が義務化されました。これにより将来的な配置転換などによる「変更の範囲」も明示する必要があります。
テレワークを導入する場合、就業場所として「会社の事業所」だけでなく「労働者の自宅」や「会社が指定する場所(サテライトオフィス等)」を含める記述が必要です。
テレワーク時の通信費・光熱費について、それらの費用についてのルールを決めておく必要があります。実費弁償か手当支給かを明確に規定することでトラブルを未然に防ぐ必要があります。
テレワーク手当として、一律定額の支給をするとした場合は、労働の対象とされ、割増賃金の算定基礎に含まれることになります。
(3)申請・承認フローと人事評価
テレワークは「権利」ではなく、会社の「許可」に基づくものとして規程に明記しておかないと、いつ出勤して、いつテレワークをするのかを会社が把握することができなくなってしまいます。
例えば「前日〇時までに申請し、所属長の承認を得ること」といった具体的な手続きを定めまておくことで会社内のコミュニケーションミスを防ぐことができます。
また、業務遂行に支障があると判断した場合に、会社がテレワーク命令を解除・中止できる旨の条項(中止命令権)も必ず盛り込んでおくべきです。(業務遂行に支障がある場合の「中止命令権」を規程に盛り込む)
テレワーク時の人事評価は成果・プロセス双方を可視化できる評価制度の整備が必要です。
テレワーク時も、みなし労働時間ではなく、勤怠管理ツール(PCログ、入退場記録等)を活用し、客観的な記録を残すようにしましょう。
まとめ
部分的テレワークは、柔軟な働き方の実現と人材確保に有効な制度ですが、労務管理・就業規則・費用負担など整備すべき事項が多岐にわたります。
テレワーク規程の整備:対象者・申請フロー・労働時間・費用負担を明文化する
労働条件通知書の見直し:2024年4月改正に対応した就業場所の記載に更新する
勤怠管理ツールの導入:客観的な記録で労働時間を適正に把握する
評価制度の再設計:成果ベースの公平な評価基準を設ける
制度設計を誤ると、未払い残業代請求などのリスクが高まります。導入・見直しの際は、社労士等の専門家にご相談ください。
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