賃金未払い予防チェックリスト:賃金不払が疑われる事業場への監督指導結果(令和7年)を公表
更新日:8月30日

令和8年8月21日、厚生労働省は令和7年(2025年)に全国の労働基準監督署が実施した、賃金不払が疑われる事業場への監督指導(立入調査)の結果を公表しました。
取扱件数は前年より増加しており、賃金不払の問題は特定の業種や規模に限らず、幅広い事業場で発生しています。
「残業代はきちんと払っている」と思っていても、計算方法や管理体制に問題があり、気づかないうちに賃金未払いとなっているケースは少なくありません。
今回の公表内容をもとに、自社の状況を改めて確認してみましょう。
出典:
令和7年の監督指導結果:3つのポイント
取扱件数:22,605件(前年比251件増)
対象労働者数:173,016人(同12,181人減)
不払賃金総額:128億5,782万円(同43億5,331万円減)
令和7年中に解決した事案の状況
解決件数:21,731件(取扱件数の96.1%)
解決した労働者数:167,828人(97.0%)
解決した金額:109億9,703万円(85.5%)
※詳細は出典にある賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和7年)を
ご覧ください。
なぜ賃金不払は起きるのか:よくある原因
残業時間の管理不足
タイムカードや勤怠システムの記録と実際の労働時間が乖離していることがあります。
労働時間の客観的な把握は、使用者の法的義務です。
また、タイムカード等を使用していても、この度の監督指導結果に添付しているとおり資料のとおり、始業前、終業後の15分間一律カットも是正対象となっております。
固定残業代(みなし残業代)の設定と運用の誤り
固定残業代を支払っていても、実際の残業時間が想定時間を超えた場合は差額の支払いが必要です。
また、固定残業代を採用するには、就業規則等へ何時間分の固定であるかを明記することが必要です。明記がない場合、固定残業代として認められないケースがあります。
固定残業代とは、一定時間分の時間外労働、休日労働、及び深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金のことです。これを採用するには、就業規則等へ何時間分の固定であるかの明記が必要です。また、実際に労働させた時間数よりも固定残業代が低い場合、差額を追加で支払わなければなりません。
※労務コラム 2026年8月31日投稿
【定期】固定残業代とは?制度の基本と導入・見直しのポイントをわかりやすく解説
就業規則・雇用契約書で定めた手当の未支給
賃金不払いと聞くと、よく労働時間による割増賃金の話になりますが、就業規則や雇用契約書に記載している手当について、支給されていないケースも賃金不払いとなります。
そして、これらについて割増賃金の計算基礎(基礎賃金)から除外できる手当でない場合は、割増賃金となる支給に算入して計算しなくてはなりません。
なお、除外できる手当は労働基準法に定められており、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7種類に限られます。
休日・深夜割増の計算ミス
法定休日労働の割増率は3割5分以上、深夜労働(午後10時から翌日午前5時)は2割5分以上です。これらが重なる場合(例:法定休日の深夜労働は合計6割以上)は、それぞれの割増率を合算して支払う必要があります。
休日について、それが所定なのか法定なのか、同じ休日でも割増率が異なりますので、勤怠の集計時には注意が必要です。
管理職の誤認定(名ばかり管理職)
管理職の中でも、労働基準法で定められている「管理監督者」は、労働時間、休憩、休日の
「課長」や「部長」などの肩書があっても、実態として経営に関与しておらず、出退勤の自由もない場合は、労働基準法上の「管理監督者」に該当しません。
この場合、割増賃金の支払いが必要です。なお、深夜割増については、管理監督者であっても支払義務があります。
※労務コラム 2026年8月31日投稿 労働基準法と管理監督者の重要性
事業主が取るべき対応
資料の準備
勤怠データやタイムカード・賃金台帳・就業規則・雇用契約書など、労働時間と賃金に関する書類を準備しておく必要があります。
これらは労働基準監督官から提出を求められることが多いため、日頃から整備しておくことが重要です。
是正報告書の提出
労働基準監督署から指摘(是正勧告)を受けた場合、是正した内容と再発防止策を文書にまとめて提出します。
厚生労働省の公式資料によれば、是正勧告を受けた法違反を是正しないなど重大・悪質な事案については、労働基準監督官が司法警察員として捜査を行い、検察庁に送検することがあります(労働基準法第102条)。
誠実かつ速やかな対応が求められます。
未払賃金の遡及支払
賃金請求権の消滅時効は、当分の間は3年とされています(労働基準法第115条・附則第143条)。
対象者や金額の特定には、上記「資料の準備」で記載した準備書面の精査が必要です。
今すぐできる予防策
経営者・人事担当者のチェックリスト
労働時間の客観的な記録・管理ができているか(タイムカード・PCログ等)
固定残業代の時間数・金額が就業規則または雇用契約書に明記されているか
実際の残業時間が固定残業代の想定している時間や額を超えていないか
就業規則・雇用契約書に定めた手当が実際に支給されているか
割増賃金の計算基礎から除外できない手当が正しく算入されているか
管理職の認定基準が法的要件(権限・待遇・出退勤の自由)を満たしているか
賃金計算の仕組みや就業規則の整備は、専門的な知識が必要です。
「うちは問題ない」と思っていても、計算方法や規程の記載に誤りが潜んでいることがあります。問題が表面化する前に、社労士等に相談し、定期的な点検を受けることが、最も確実な予防策です。
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