固定残業代とは?制度の基本と導入・見直しのポイントをわかりやすく解説【顧問先様用解説動画付き】
更新日:7 日前

求人票や雇用契約書で見かけることのある「固定残業代」。採用や賃金設計の場面で活用される制度ですが、これから導入する場合だけでなく、すでに導入している場合でも、記載内容や運用方法を定期的に確認しておくことが大切です。
「毎月定額で支払っているから問題ない」と思われがちですが、実際にはそう単純ではありません。今回は、固定残業代の基本的な考え方と、導入時・導入後の見直しで押さえておきたい実務上のポイントを、できるだけわかりやすく整理します。
出典
固定残業代とは
固定残業代とは、一定時間分までの時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増賃金を、あらかじめ定額で支払う仕組みです。「定額残業手当」や「みなし残業代」と呼ばれることもあります。
厚生労働省でも、固定残業代には、基本給の中に組み込むタイプと基本給とは別の手当として支払うタイプがあると案内されています。
つまり、固定残業代は「残業代を払わなくてよくなる制度」ではなく、一定部分をあらかじめ定額で支払う制度と言えます。
固定残業代を導入・見直しするときに大切なこと
固定残業代で特に大切なのは、制度の名前よりも、何をどのように支払っているのかが明確になっていることです。
厚生労働省の案内では、固定残業代を支払う場合、
通常の労働時間の賃金に当たる部分
割増賃金に当たる部分(固定残業代)
この2つが判別できるようになっていることが必要とされています。
会社としては固定残業代のつもりで支払っていても、契約書や規程の記載があいまいだと、後からその説明が通りにくくなることがあります。そのため、導入時はもちろん、すでに運用している場合でも、実態に合った記載になっているかを見直すことが重要です。
基本給と分けて、金額・時間数を明確にすることが大切です
上記のように、固定残業代を設ける場合は、基本給とは別に、固定残業代の金額と対象時間を明確に示すことが大切です。
厚生労働省の案内でも、固定残業代を支払う場合には、通常の労働時間の賃金に当たる部分と、割増賃金に当たる部分とを判別できるようにする必要があるとされています。
そのため実務では、「基本給○円、固定残業代○円(○時間分)」というように、分けて表示しておくほうが、求職者または従業員にとってわかりやすく、後の説明もしやすくなります。
固定残業代の対象に含めていない休日労働・深夜労働が発生した場合の取扱いも、雇用契約書や賃金規程で整理しておくと安心です。
「固定で払っているから追加支払いは不要」ではありません
固定残業代について、実務上もっとも誤解されやすいのがこの点です。
固定残業代の金額が、労働基準法第37条等に基づいて計算した割増賃金額を下回るときは、その差額を支払う必要があります。
つまり、実際の時間外労働等に対して計算した結果、固定残業代だけでは足りない場合は、不足分を追加で支払わなければならないということです。
このため、固定残業代を採用していても、実際の労働時間を把握しなくてよいわけではありません。固定時間を超えたかどうかを確認するためにも、日々の労働時間管理は引き続き必要になります。
求人票や労働条件通知書でも、明示の仕方が重要です
固定残業代は、社内で決めて終わりではなく、採用時にどう示すかも大切です。
厚生労働省は、労働者を募集する際に固定残業代を支払う場合、求職者等に対して少なくとも次の内容を明示する必要があると示しています。
固定残業代の計算方法
固定残業代を除外した基本給の額
固定残業時間を超える時間外労働、休日労働、深夜労働分については追加で割増賃金を支払うこと
また、労働契約の締結時にも、「賃金の決定、計算及び支払の方法」を書面等で明示する必要があります。固定残業代については特に、通常賃金部分と固定残業代部分がわかる形になっているか、そして何に充当する賃金なのかが読み取れるかが大切です。
最低賃金との関係も確認しておきたいポイントです
固定残業代を設ける場合、給与総額だけを見て安心してしまわないようにしたいところです。
厚生労働省は、最低賃金の対象となるのは毎月支払われる基本的な賃金であり、残業代は最低賃金の対象に含まれないと案内しています。
そのため、固定残業代を設定している場合は、固定残業代を除いた基本的な賃金部分で最低賃金を満たしているかという視点で確認することが必要です。
月給総額が高く見えていても、その内訳によっては別の問題が生じることがあります。制度設計の段階だけでなく、見直しの場面でもチェックしておきたいポイントです。
実務で押さえておきたい確認ポイント
固定残業代を導入・見直しする際は、少なくとも次の点を確認しておくと安心です。
1.何時間分の固定残業代なのか
時間数が明確になっているかを確認します。
2.固定残業代の金額が区分されているか
基本給と固定残業代が分けて表示され、通常賃金部分との区別ができるかを見ます。
3.何に充当する固定残業代なのか
時間外労働分なのか、休日労働・深夜労働分も含むのかを、雇用契約書や賃金規程で
確認します。
4.超過分の支払いルールがあるか
固定時間を超えた場合の追加支払いが明示されているかを確認します。
5.求人票・労働条件通知書・雇用契約書・賃金規程の記載がそろっているか
採用時の説明と実際の契約内容にズレがないかを見ます。
6.最低賃金との関係に問題がないか
固定残業代を除いた基本賃金で確認することが大切です。
まとめ
固定残業代は、制度として直ちに問題があるものではありません。ただし、実務では
固定残業代であることが明確か
何時間分・いくら分なのかがわかるか
何に充当するのかが明記されているか
超過分を追加で支払う仕組みがあるか
採用時の明示と契約内容が整合しているか
最低賃金との関係に問題がないか
といった点がきちんと整理されていることが大切です。
言い換えると、固定残業代は「入れるかどうか」よりも、「どう書くか・どう運用するか」が重要な制度です。求人票、雇用契約書、賃金規程の3つをそろえて見直しておくことで、後々の労務トラブル予防につながります。
社内で対応が難しい場合は、社労士等の専門家までご相談することをお勧めいたします。
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