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健康保険の扶養ルールの見直しと、年末に向けて進めたい準備【顧問先様用解説動画付き】

deviseanew
8月10日
読了時間: 7分

更新日:8月25日

家族、保険証や収入証明、12月カレンダー、年末調整書類を示す税務イラスト。書類を確認する会社員と虫眼鏡。

健康保険の「被扶養者の取扱い」について、見直しが行われています。


パート・アルバイトで働くご家族がいる場合は、収入や働き方によって扶養の判定(被扶養者認定)に影響が出ることがあるため、経営者や人事担当者の皆さまにとっても、早めに確認しておきたいテーマの一つです。


令和8年4月からは、被扶養者認定における年間収入の見方に新しい取扱いが導入されました。

あわせて、秋から年末にかけては、協会けんぽによる被扶養者資格の再確認や、扶養状況の見直しに伴う手続対応が必要になることもありますので、令和8年4月からの取り扱いと併せて、現行の扶養のルールを再度確認することで、年末になって慌てないよう、今のうちから全体像をつかんでおくことが大切です。


出典

厚生労働省「年収の壁」への対応

日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/jigyosho/2026/202605/0501.html

協会けんぽ「被扶養者の認定における特例について」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/public_relations/004/index.html

協会けんぽ「令和7年度被扶養者資格の再確認について」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/dependent_status/001/index.html

協会けんぽ兵庫支部「令和8年度被扶養者資格再確認」の実施についてhttps://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/hyogo/assets/HuyouKakuninR8.pdf

 1.令和8年4月から被扶養者認定が変わっています 


令和8年4月1日以降は、一定の要件を満たす場合、被扶養者認定の年間収入について、契約書類(労働条件通知書や雇用契約書など)に記載された内容から見込まれる年間収入を基に判断する取扱いが導入されています。


基準額は、原則として年間130万円未満ですが、60歳以上の方や一定の障害がある方は180万円未満、さらに19歳以上23歳未満の方(配偶者を除きます。)は150万円未満とされています。

これまでよりも、実際の働き方や契約内容に沿って判断しやすくなる場面がある一方で、基準額を証明する書類の整備が重要になります。


 2.どのような場合に新しい取扱いが使えるのか 


被扶養者の契約書類に基づいて年間収入の見込み額を確認することとなりますので、契約書類において賃金額や労働条件がきちんと記載されていて、他の収入が見込まれない場合には、契約上から見込まれる年間収入から被扶養者認定を行う取り扱いに変更となりました。


一方で、契約期間が1年未満である場合、シフト制で労働時間がはっきりしない場合、その他手当額が不明確な場合は、年間収入を適切に判定できないため、今回の契約書類での被扶養者認定による方法ではなく、従来通りの方法、現時点での収入などを総合勘案して将来の収入見込みを判断することになり、個別にケースバイケースとして判断することになります。

「扶養に入れるかどうか」だけではなく、「その判断を裏づける書類がそろっているか」まで見ておくことが大切です。


 3.一時的に収入が増えた場合の特例もあります 


人手不足による労働時間の延長などで、一時的に収入が増えることもあります。そのような場合については、協会けんぽでは、事業主の証明を添付することで、一定の条件のもと、原則として連続2回まで被扶養者認定を受けられる特例が案内されています。


ただし、これはあくまで「一時的な収入変動」に対応するための取扱いです。継続的に収入が増える見込みである場合には、扶養を維持できるわけではありません。

そのため、「たまたま一時的に増えたのか」「今後も継続して増えるのか」を丁寧に見分ける必要があります。


 4.106万円の壁も意識しておきたいところです 


自社での被扶養者の要件と、ご家族の勤務先での被保険者要件がバッティングしているときは、ご家族の勤務先で社会保険に入ることになります。


冒頭の年間130万円未満の基準額は、いわゆる「130万の壁」と言われるものですが、従業員数(社会保険加入の被保険者数)が51人以上の会社(特定適用事業所といいます)では、週20時間以上働いており、月額8.8万円以上の場合は、その特定適用事業所の社会保険に加入しなければなりません。


つまり、扶養となろうとしている従業員のご家族の年間収入が130万円未満であるため、自社の従業員の扶養の要件に該当していたとしても、ご家族が勤務している会社が特定適用事業所に該当している場合は、従業員の扶養になることができず、ご家族が勤務している会社の健康保険に加入する可能性が出てきます。


そして特定適用事業所における社会保険の加入条件が、

上記の月額8.8万×12か月=年間105.6万円 となり、この数字を丸めたものが「106万の壁」です。


※月額8.8万円については、2026年10月で撤廃となります。

理由は最低賃金の値上がりで、現行法上の最低時給が1,023円(高知県、宮崎県、沖縄県の3県)となっています。

週20時間以上ということは、月4週とした場合、

週20時間 × 4週 = 月80時間

月80時間 × 時給1,023円 = 月額8万1840円となります。


東京の場合

 現行法上の最低時給 1,226円 × 80時間 =月額98,080円

 2026年10月からの最低時給 1,280円 × 80時間 =月額102,400円


このことから、既に多くの都道府県では週20時間以上働くということは、自働的に月額8.8万円になっていることになるため、廃止となることになったというわけです。


※特定適用事業所は更に「学生ではない」という条件があります。

 これと冒頭の19歳~23歳の150万円未満と組み合わせると多くのケースが考えられます。

※改めて制度の基礎的な内容も含めて、【顧問先様用動画】で解説します。


「106万円の壁」についても、見直しの方向性が示されています。

今後も短時間労働者に対する社会保険の適用拡大が進む見込みであり、「扶養の範囲内での働き方」を前提にした人員配置やシフト調整が、これまで以上に難しくなる可能性があります。

特定適用事業所

・2027年10月: 従業員数(社会保険加入の被保険者数)「36人以上」の企業

・2029年10月: 従業員数(社会保険加入の被保険者数)「21人以上」の企業

・2032年10月: 従業員数(社会保険加入の被保険者数)「11人以上」の企業

・2035年10月: 企業規模要件が完全に撤廃

参考URL:


そのため、被扶養者認定の問題は、ご本人の年収管理だけの話ではなく、会社としての採用計画、労働時間管理、社会保険加入の見込み説明ともつながってきます。人事労務の実務では、特定適用事業所の動きとあわせて見ていくことが大切です。


 5.秋から年末にかけて、被扶養者資格の見直し対応が必要になることがあります 


協会けんぽでは、毎年度、被扶養者資格の再確認を実施しています。

目的は、現在扶養に入っている方が引き続き要件を満たしているかを確認することです。

確認には今回の被扶養者認定の要件を満たしているか、そのための書類がそろっているか、といった点が見られることになります。 協会けんぽ


 6.今のうちに進めておきたい準備 


今の時点で確認しておきたいのは、扶養に入っているご家族の働き方や収入が変わっている方がいないかという点です。


特に、最近シフトが増えた方、契約更新があった方、手当の支給内容が変わった方については、契約書類、給与明細などを早めに見直しておくと、後の確認がスムーズになります。


また、一時的な増収で特例の対象になりそうなケースなのか、継続的な収入増で扶養削除や社会保険加入の検討が必要なケースなのかを、社内であらかじめ整理しておくことも大切です。年末に書類が届いてから確認を始めると、回収や判断が間に合わなくなることもありますので、秋口までに担当者・確認方法・必要書類を整理しておくと安心です。


 まとめと具体的な対策 


健康保険の扶養に関するルールは、令和8年4月から実施された契約内容を踏まえた年間収入の被扶養者認定の取り扱いや、19歳以上23歳未満の方の基準の見直しなど、実務に影響するポイントが増えています。あわせて、秋から年末にかけては、協会けんぽによる被扶養者資格の再確認の実施対応や扶養状況の見直しに伴う届出対応が発生することがあります。


具体的には、まず従業員の被扶養者の働き方や収入状況を確認し、次に契約書類や給与関係資料を整理し、その上で一時的な収入変動なのか継続的な増収なのかを見極める流れが進めやすいです。判断が難しいケースでは、早めに整理しておくことで、年末の対応負担をかなり軽くできます。


被扶養者認定は、収入だけで機械的に判断できない場面もあり、保険者ごとの運用や個別事情が影響することがあります。迷う場合は、社会保険労務士等の専門家に相談しながら、自社に合った対応を進めることをおすすめします。


【顧問先様用解説動画 再生時間39:56 スライド12枚】



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