令和8年熊本地震で事業主・人事担当者が確認したい雇用・労務・社会保険の特例措置
更新日:8月25日

このたびの令和8年熊本地震により、お亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
被災地の一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。
今回は、令和8年熊本地震に関連して、事業主・人事担当者が押さえておきたい雇用・労務・社会保険分野の特例措置を、現時点で公表されている厚生労働省・熊本労働局等の情報に基づいて整理します。被災直後は制度が順次追加・更新されることもあるため、最新情報の確認をしてみてください。
出典
・厚生労働省「令和8年熊本地震について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73935.html
・厚生労働省「雇用・労働に関する特例措置や支援制度(令和8年熊本地震について)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000134526_00005.html
・熊本労働局「令和8年熊本地震で被災された方へ(労働行政関係)~特別労働相談窓口~」https://jsite.mhlw.go.jp/kumamoto-roudoukyoku/newpage_02058.html
・熊本労働局「令和8年熊本地震に伴う雇用保険の基本手当の特例措置について」https://jsite.mhlw.go.jp/kumamoto-roudoukyoku/content/contents/002754640.pdf
・厚生労働省「令和8年熊本地震に係る国民健康保険料(税)等の取扱いについて」https://www.mhlw.go.jp/content/001730395.pdf
・厚生労働省「令和8年熊本地震について(状況報告)」https://www.mhlw.go.jp/content/001732278.pdf
まず確認したいポイント
令和8年熊本地震に関しては、雇用保険、労災保険、未払賃金立替払、労働保険料の納付猶予、医療保険の受診特例、国民年金保険料の免除、厚生年金保険料等の納付猶予制度の周知など、社労士実務に直結する対応が公表されています。被災した従業員本人だけでなく、被災により休業や手続遅延が生じた事業所にも関係する内容です。
1.雇用保険の基本手当には特例措置があります
被災により通常どおりハローワークへ行けない場合や、事業所が直接被害を受けて一時的な離職を余儀なくされた場合には、雇用保険の基本手当に関する特例措置が用意されています。
具体的には、失業認定日に来所できない場合の認定日変更、避難先など別のハローワークでの手続、必要書類がそろわない場合の柔軟な取扱いなどです。 熊本労働局
また、地震により直接被害を受けた事業所で休業し、一時的に離職した方については、基本手当の特例措置の対象となる場合があります。ただし、この特例を利用して失業給付を受けた場合、その後に再就職しても、特例利用前の被保険者期間が通算されない点には注意が必要です。従業員から相談を受けた際は、短期的な資金確保だけでなく、その後の雇用保険上の影響も踏まえて説明することが大切です。
2.労災保険の請求は手続が簡略化されています
労災保険給付については、災害時の混乱を踏まえ、事業主や医療機関の証明が受けられない場合でも請求書を受理するなど、手続の簡略化が示されています。
通常どおりの書類がすぐにそろわない場面でも、まずは相談・請求につなげることが可能です。 厚生労働省
さらに、アフターケア手帳を提示できない場合の受診、災害でき損した義肢等補装具の修理・再購入への対応、労災年金証書を紛失した場合の再交付なども案内されています。被災した従業員に労災既受給者がいる場合は、これらの周辺措置も忘れずに確認しておきたいところです。
3.未払賃金立替払制度も確認が必要です
被災の影響で企業が倒産等し、賃金未払のまま退職を余儀なくされた労働者については、未払賃金立替払制度の申請手続の簡略化が案内されています。事業継続が難しくなったケースでは、従業員保護の観点から非常に重要な制度です。
特に、事業主側としては、倒産や休廃業の局面で労務対応が後手になりやすいため、従業員への情報提供を早めに行うことが重要です。事業継続の見通しが不透明な場合ほど、制度の存在を早期に共有しておくことが望まれます。
4.労働保険料は納付猶予等の相談対象です
熊本労働局では、労働保険料の納付期限や猶予等に関する相談窓口を設けています。加えて、厚生労働省の状況報告では、労働保険料等の納付について、事業主等からの申請に基づく猶予措置等を実施するとされています。資金繰りが厳しい事業所は、放置せず早めに労働局へ相談することが重要です。
災害時は「払えないなら後でまとめて」と考えがちですが、実際には申請が必要な制度もあります。期限徒過を避けるためにも、まずは自社が対象となるか、どの手続が必要かを確認しましょう。 厚生労働省
5.医療保険は、受診や自己負担に配慮した特例があります
被災により、マイナ保険証や資格確認書等を提示できない場合でも、医療保険による受診が可能とされています。避難や紛失で保険証類を持ち出せなかった従業員やご家族にとって、重要な取扱いです。 厚生労働省
また、国民健康保険については、保険者の判断により、保険料(税)の徴収猶予・納期限延長・減免、一部負担金の徴収猶予または減免を行うことができる旨が再周知されています。会社員本人は協会けんぽや健康保険組合加入である場合も多いですが、ご家族や退職者、個人事業主については国保の取扱いが関係することがあります。人事担当者としても、従業員から相談があった際に概要を案内できるようにしておくと安心です。
6.年金分野では、国民年金保険料の免除と厚生年金保険料等の納付猶予制度の周知が行われています
厚生労働省の状況報告では、被災した被保険者に係る国民年金保険料の免除を行うよう日本年金機構に指示するとともに、対象市町村にも周知したことが示されています。個人の保険料負担が困難になった場合には、免除制度の確認が必要です。
また、被害を受けた適用事業所に対する厚生年金保険料等の納付猶予制度についても、日本年金機構への周知通知が出されています。社会保険料の納付が厳しい事業所は、年金事務所等に早めに相談することが重要です。単に「払えないから待つ」のではなく、制度に沿って相談・申請する姿勢が必要になります。 厚生労働省
7.中小企業退職金共済なども対象になり得ます
厚生労働省の公表資料では、被災した共済契約者(事業場)の掛金について、納付期限の延長や支払手続の簡素化等が可能である旨も示されています。退職金共済制度を利用している事業所では、労働保険や社会保険だけでなく、こうした周辺制度もあわせて確認しておくとよいでしょう。 厚生労働省
8.困ったときは、特別労働相談窓口を活用しましょう
熊本労働局では、令和8年熊本地震に関して特別労働相談窓口を設置しています。相談内容は、労働条件・労務管理、給料の未払、労災補償、雇用保険の特例給付、就職相談、労働保険料の納付期限・猶予、雇用調整助成金、労働者派遣など多岐にわたります。どこへ相談すべきか分からない場合でも、まずは窓口につなぐことができます。 熊本労働局
まとめ
令和8年熊本地震に関して、現時点で公表されている社労士実務上の主なポイントは、雇用保険の特例、労災請求の簡略化、未払賃金立替払、労働保険料の納付猶予、医療保険の受診特例、国民年金保険料の免除、厚生年金保険料等の納付猶予制度の周知です。被災時は、従業員対応と自社の手続対応が同時進行になりやすいため、制度を早めに整理しておくことが重要です。
事業主・人事担当者が今すぐ取りたい具体策
・休業・離職見込みの従業員がいる場合は、雇用保険特例の対象可能性を確認する
・労災や通勤災害の相談がある場合は、証明書類が不足していても早めに相談する
・労働保険料や社会保険料の納付が厳しい場合は、猶予制度の対象可否を確認する
・従業員やその家族から医療保険・国民年金の相談があれば、減免・免除制度を案内する
・判断に迷う場合は、熊本労働局、ハローワーク、年金事務所、保険者、社労士などの
専門家へ早めに相談する
災害時の制度は、通常時とは異なる特例が設けられる一方で、対象要件や申請方法、期限が個別に定められることが多いです。
実際の適用可否は事案ごとに異なるため、制度の利用を検討する際は、最新の公表資料を確認のうえ、最寄りの社会保険労務士等の専門家に相談することをおすすめします。
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