top of page

「ハラスメントを恐れて指導できない」管理職の増加――組織規律の崩壊を防ぐ「正当な業務指示」の再定義

deviseanew
3 時間前
読了時間: 5分
淡い青のオフィスで、書類を持つ4人の男性が列をなし、左の男性は胸に書類を抱えて緊張した様子。時計と窓、観葉植物がある。

「ハラスメントを恐れて指導できない」管理職の増加――組織規律の崩壊を防ぐ「正当な業務指示」の再定義


目次


2020年のパワハラ防止法(労働施策総合推進法)の施行以降、企業におけるハラスメント教育は急速に浸透しました。しかし、その副作用として「過剰な防衛本能」によるマネジメントの停滞が顕在化しています。


現場の管理職から聞こえてくるのは、「これを言ったらパワハラと言われるのではないか」という切実な不安です。


その結果、遅刻やミスを繰り返す部下、あるいは業務態度の悪い社員に対して必要な注意を控える指導の空白が生じています。

こうした現象は、決して個人の資質の問題ではありません。


2021年から2023年にかけて行われた複数の意識調査によれば、管理職の約6割から7割が、ハラスメントと捉えられることを恐れて本来必要な指導を躊躇した経験があると回答しています。

また、2024年に公開された最新の労働環境に関するレポートでも、上司が部下への踏み込んだアドバイスを避ける育成キャンセルが組織の成長を阻害している実態が浮き彫りになっています。

しかし、こうした事なかれ主義による放置は、決して安全な選択ではありません。むしろ、組織全体の規律を損ない、真面目に働く社員のモチベーションを低下させ、最終的には企業に深刻な労務リスクをもたらします。

本記事では、この課題の本質を説き、企業が今取り組むべき対策について見ていきたいと思います。


1.指導放棄が企業にもたらす「目に見えないリスク」

管理職が指導を躊躇することは、単なるマネジメントの問題ではなく、法的なリスクをかかえてしまうことになります。


(1)安全配慮義務違反への発展

会社には、全労働者が心身の健康を保って働けるよう配慮する義務があります。

特定の社員がした問題行動を放置した結果、周囲の社員に過度な業務負担や精神的ストレスが集中し、メンタルヘルス不調を引き起こした場合、会社は職場環境を適切に維持しなかったとして安全配慮義務違反を問われる可能性があります。


(2)優秀な人材の離職と正直者が馬鹿を見る文化

会社の規程や規則を守り成果を出している社員にとって、問題社員が放置されている状況は最大の不満要因です。

働き方改革が進み、男性育休の取得促進や柔軟な働き方が広がる中で、その土台となる公平な評価と規律が崩れていれば、優秀な人材から順に組織を去っていくことになります。


2.「パワハラ」と「正当な指導」を分ける実務的境界線

法的に業務上必要かつ相当な範囲で行われる指導は、パワハラには該当しません。

管理職が自信を持って指導を行うためには、以下の3要素を客観的に整理しておく必要があります。


・業務上の必要性:その指示は、会社の利益や顧客への責任、チームの生産性に基づいたものか。

・人格否定の排除:君はダメな人間だといった人格否定ではなく、このミスを修正してほしいという行動の修正に徹しているか。

・態度の相当性:大声で怒鳴る、長時間の拘束、多人数が見ている前での叱責など、手段が社会通念を逸脱していないか。


これらの基準を明確にせず、管理職個人の裁量に任せきりにすることが、現場の混乱を招く最大の原因です。


3.企業が備えるべき労務管理

管理職にすべてを任せるのではなく、組織として規律を維持するためには、構造的な対策が不可欠です。


(1)指導ログ(記録)の徹底と証拠化

指導を行う際は、必ずいつ、どのような事実に対し、どのような指導を行い、本人がどう反応したかを記録に残します。

これは万が一のトラブルに備えて、会社側が適切な教育・指導を行っていたことを証明する極めて強力な証拠となります。

休職規定や懲戒規定の運用においても、この指導の積み重ねが法的正当性を左右することになります。


(2)就業規則および諸規定の再整備

正当な指導に従わない場合の不利益や手続きを就業規則に明文化しておく必要があります。規定が曖昧なままでは、管理職は注意しても意味がないと無力感を感じてしまいます。

実務に即した規定のアップデートこそが、管理職を守ることになります。


4.持続可能な組織作りに向けて

働き方改革の本質は、単に労働時間を短縮することではなく、限られた時間の中で最大限の成果を出せる健全な組織を作ることです。

そのためには、ハラスメントの防止と、正当な指導の遂行を両立させなければなりません。


しかし、現場ごとに異なる複雑な人間関係や、刻々と変わる法解釈の中で、企業が単独でこのバランスを取り続けるのは容易ではありません。


・指導とハラスメントの線引きに自信が持てない

・問題社員への対応で管理職が疲弊している

・今の就業規則が、現場の指導をバックアップできる内容になっていない


こうした不安を抱えたまま放置することは、将来的な労務紛争の火種を育てることにつながります。


5.まとめ

ハラスメントを恐れて指導できないという課題は、放置すればするほど解決が困難になります。

働き方改革の一環として、また持続的な成長を支える組織基盤の構築として、今こそ包括的な対策が必要です。

当事務所では、企業の経営実態に即した就業規則の見直しや、管理職向けのフィードバックスキル向上、そしてトラブルを未然に防ぐための継続的な労務アドバイスを提供しております。

貴社の現場で起きている個別の事案に対し、法的な専門性と実務的な視点の両面から最適な解決策をご提案いたします。組織の規律を取り戻し、社員が安心して働ける環境を整えるために、まずはお気軽に当事務所へご相談ください。


キーワード ハラスメント 管理職

※掲載内容は執筆時の情報です。法改正等により内容が変更される場合があります。本サイトの情報を利用した結果生じたトラブル等について、当方は責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。

※本サイトのテキスト・画像の無断転載・転用を固く禁じます。

bottom of page